2007年7月31日、神宮球場にて第89回全国高等学校選手権大会西東京大会決勝が行われ、創価高等学校野球部が12年ぶり5回目の甲子園出場を果たしました。
実は私三土手大介は、2003年から創価高校野球部のウエイトトレーニングコーチをしておりました。ウエイトのコーチになった経緯は、創価高校の身体のメンテナンスを行っているS先生と知り合いでして、S先生が野球部から「誰か良いウエイトのコーチはいませんか?」と尋ねられ、そして僕に依頼が来ました。
創価高校野球部は少数精鋭のチームです。少数精鋭とはいえ、一年生から三年生まで40名以上はいます。それらの生徒全員を限られた時間の中で効率よくトレーニングさせ、指導していくのに最初は凄く苦労した記憶があります。また、生徒のほとんどはまともなウエイトトレーニングを行っておらず、やっていたとしても自己流の偏ったトレーニングでした。本当にゼロからのスタートでしたので、最初に徹底的に教えたことは、彼らが思っているウエイトトレーニングの偏見をなくすことと、ウエイトトレーニングとはどのようなものか?ということを教えました。また、怪我を防ぐということで、正しいプレートの付け替え方、補助の仕方を細かく教えました。もちろん栄養面やメンタル面も指導しました。
ウエイトの指導をしに初めて生徒と対面したとき、生徒に「今現在怪我をしている人、特に腰痛がある人?」という質問をしました。すると驚くことに部員の半分以上の生徒が手を挙げました。そのほとんどは腰痛でした。生徒たちは腰痛がある中でウエイトトレーニングを行って悪化することを恐れていたと思いますが、僕は腰痛があるからこそ体幹部をしっかりと鍛えて腰痛を改善しなければダメだということを力説しました。


ノーリミッツでも2003年頃から重心理論を用いたトレーニングを行い始めていたので、当然野球部の生徒たちにも重心理論の説明をし、重心理論でウエイトトレーニングをさせました。トレーニングを開始して感じたことは「えっ?!」と思うほど全体の筋力レベルが低かったのです。全国から集められた部員たちなので野球のセンスはもちろん、運動神経も人並み外れたものを持っているはずです。しかし、筋力レベルはかなり低かったのです。このギャップが腰痛やその他怪我を誘発していたのだと思います。つまり、自分の身体の動きに筋力がついて行かない、だから骨格や靭帯に負担がかかって痛みを出してしまうということです。
野球部が本格的なトレーニングを初めて三ヵ月後、僕はもう一度、最初に生徒にした質問をしてみました。「今現在腰が痛い人?」手を挙げたのはたった二人でした。ただ、その二人は脊椎すべり症と脊椎分離症だったので、原因が分からないただの腰痛だった生徒は一人もいなくなりました。
半年、一年と経った頃には生徒たちの身体も目に見えて大きくなり、特に背中とお尻の厚みは別人のように変わりました。野球に関しても身体のキレや、打球の飛距離が格段に変わったと、監督や部長から報告をうけました。創価高校のグランドには30mのネットがあり、よほどの飛距離が出ない限り、そのネットを越えることはないそうですが、そのネット超えがしばしば起こり嬉しいのですが、近所からの苦情が・・・と、部長が複雑な表情で話していました。
ウエイトトレーニングというものが大分理解できるようになってきて順調にトレーニングをまわせるようになるまでに一年くらいかかりました。でも、正しいトレーニングを一年ほど行うと筋力的に素質のある選手はすさまじいパワーを獲得しました。その代表格ともいえる生徒で今でも鮮明に覚えているのは、現在も創価大学野球部三年生で活躍している小早川選手です。この生徒はかなりのスラッガーで、ウエイトトレーニングで筋力アップして、当てそこないでもホームランにしてしまうほどのパワフルバッターでした。とにかくスクワットとデッドリフトが強く、見た目もアニマル系で、初めて見た時に、ノーリミッツの82.5kg級の小早川渉選手と親戚関係かと思ったくらいです。(実際は違いましたが、似ています)たしか、体重は80kgちょっとで、スクワットはフルスクワットで150kg×6Repsくらい、デッドリフトはこの時期は床で一旦停止させていなかったですが、ナローデッドリフトで180kg×6Repsくらいまで強く成長しました。この記録はパワーリフティングを専門に行っている高校生と比べてもトップクラスといえるのではないでしょうか?


最初は全体的に低かった筋力レベルも年を追うごとにレベルアップしていき、現在ではあの小早川君の記録を抜く生徒も出 てきて、数年前までトップクラスだった生徒の記録は、今や現在の二年生でも普通に扱うくらいまでレベルが上がりました。もちろんフォームもみんな良いですし、重心理論で無理のないフォームで行っているので、怪我をする生徒もほとんどいません。全国の高校の中でもこれだけ理論的に正しくウエイトトレーニングを行っているのは創価高校だけではないでしょうか。なぜならノーリミッツと同じことを行っているのですから。
僕自身は生徒たちの筋力を安全に、なおかつ競技に直結するような筋力アップが仕事ですので野球の技術のことに関しては当然何も口出しはしません。しかし、僕が教える重心理論はウエイトトレーニングだけでなく全ての動きに対する基本の理論なので、その理論をしっかり理解して、彼らなりに野球の動きにも取り入れているのでしょう。野球の成績も年を追うごとに少しずつ向上してきました。
夏の甲子園は泣いても笑っても一発勝負です。本当に過酷なトーナメントだと思います。創価高校は2005年夏の甲子園予選はベスト16。昨年も四回戦で惜しくも東海大菅生に敗れてベスト16。4回戦あたりが一つの壁なのでしょうか。シード高となって挑んだ今年の大会は四回戦を見事突破し、そのまま勢いにのり、準々決勝で堀越学園、準決勝で日大三高と、どれも厳しい戦いでしたが、見事勝利し10年ぶりの決勝進出となりました。決勝の相手は八王子です。今回の大会は仕事の都合で4回戦と決勝戦しか応援に行けませんでしたが、球場で応援していると、一球一球に一喜一憂し、見ていて本当に胃に悪いです。自分がパワーの試合をしているほうがどれだけ楽か・・・。





決勝戦には今までウエイトトレーニングを教えてきた卒業生たちもたくさん応援に来ていて、みんなで一生懸命応援しました。やはり決勝に勝ち上がって来ただけあって、対戦相手の八王子は強く、接戦の中7回が終わった時点で3対3の同点という試合展開でした。そして8回の裏、ここで創価高校の4番バッターがセンターバックスクリーンに叩き込むホームラン!得点は4対3で創価高校勝ち越し。「勝てる!」と思った瞬間涙が溢れてきます。でも、まだ決まったわけではないし気持ちを引き締めて声援を送る。創価は勢いに乗りこの回3点を追加。8回の攻撃が終わった時点で6対3。あとは9回の八王子の攻撃を防げば夢の甲子園。涙をグッとこらえながらの応援。最後のアウトを取った瞬間今まで溜まっていたものが一気に噴出したかのように号泣してしまいました。こんなに泣いたのは自分が2000年の世界パワーで初優勝した時以来です。本当に感動しました。










今大会の前、ウエイトトレーニングの最後の日、全員がそろった中でキャプテンの中安君が「三土手先生を甲子園に連れて行くことを約束します!」と言ってくれました。彼らは見事その約束を果たしてくれました。口で言うのは簡単ですが、その約束を守るためには本当に厳しい練習があったと思います。
もうすぐ甲子園での熱い戦いが始まります。甲子園では今まで以上に厳しい戦いが待ち受けているでしょうが、彼らには今まで自分たちがやってきたことを信じて頑張って欲しいと思います。僕も応援に行きます。
最後に創価高校野球部監督、部長はじめ関係者の皆様本当におめでとうございました。そして、野球部のみんなおめでとう!
2007.8.1
創価高校野球部ウエイトコーチ
ノーリミッツ 三土手大介